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2009年5月 6日 (水)

裁判員制度に「参加したくない」79%の声は何を語るか

裁判員制度を問う

読売新聞が5月3日の紙面で「裁判員制度」に関する全国世論調査を掲載している。「裁判員として裁判に参加したいか」という問いには、「参加したい18・1%」と過去最低となり、「参加したくない79・2%」は過去最高となった。さらに、裁判員制度の導入に対して「賛成34%」「反対62%」とダブルスコアで反対が上回り、さらに「反対」を表明した人の95%が「裁判員になりたくない」と回答している。また、「裁判員になりたくない」と回答した人の理由は「有罪・無罪を的確に判断する自信がないから50・1%」「刑の重さを決める量刑を的確に判断する自信がないから52・5%」「人を裁くことに抵抗を感じるから51・4%」(複数回答)上位の3つとなっている。これだけ世論調査結果が拒否感が示しているのに、何の議論もないままに漫然と制度の導入を眺めている。こんな国会でいいのかと強く思う。

同じ日の朝日新聞では、但木敬一元検事総長がインタビューに答えて、「死刑判決」に関与することに市民の懸念が強いことに触れている。「確かに重い判断にかかわる裁判員の心理的負担は大きいでしょう。そこで、何より大切になるのが評議のプロセスです。評議は多数決制ですが、全員が納得するまで時間をかけ、裁判員が「みんなが納得しか上での結論なのだ」という気持ちが持てるようにすることが大切です。早く裁判を終わらせることにこだわっていては、本末転倒になってしまいます」と、私が昨年提案していた「死刑判決の全員一致制度」に完全に同調している。守秘義務についても、「実際に刑事罰が科せられるのは極端な場合に限られると思います。私はむしろ評議で自分が考えたことや感じたことなど、経験をおおいに伝えてもらえるよう期待しています」と述べている。

それなら守秘義務違反の国民への罰則は即刻削除すべきである。「極端な場合」は既存の刑法等で摘発できるはず。余分な罰則など撤廃することがなぜ出来ないのか。元検事総長が発言しながら、「自由と民主主義」を守ってきたはずの人たちが沈黙していていいはずがない。この制度を推進している人から、「裁判員制度はガラス細工のようにもろいものです。ですから、針一本でも抜いてしまうとガタガタと崩れだしてしまう」というつぶやきを聞いたことがある。だから「死刑判決の全員一致」「裁判員の守秘義務への刑事罰の撤廃」をやろうとするのは無理だというのだったら、本末転倒ではないか。

「裁判員制度を問う 」 保坂展人のどこどこ日記より
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/8556aa5f1f14dd70060ac5e177aa5271

「読売新聞掲載全文」
裁判員になったら「死刑も選択」63%…読売調査
読売新聞社が4月25~26日に面接方式で実施した裁判員制度に関する全国世論調査で、裁判員になった場合、死刑に相当すると思えば死刑を「選択する」と答えた人は63%、「選択しない」は23%だった。5月21日から始まる裁判員制度によって、刑事裁判が「良くなる」と思う人は48%で、前回2006年12月の53%からは減った。ただ、今回も「悪くなる」27%(前回23%)を大きく上回り、世論は裁判員制度が始まることを前向きに評価した。これまでの刑事裁判の判決については、「適切だと感じたことが多い」は34%にとどまり、「軽すぎる」が50%、「重すぎる」は4%だった。裁判員制度への評価には、国民が裁判に参加することで、判決と国民の処罰感情との隔たりが縮まるという期待も込められているようだ。制度の仕組みについては、「よく知っている」4%、「ある程度は知っている」45%を合わせると49%となり、前回の30%から大幅に増えた。しかし、裁判員として裁判に「参加したい」と思う人は18%(同20%)にとどまり、「参加したくない」は79%(同75%)だった。参加したくない理由(複数回答)では、「刑の重さを決める量刑を的確に判断する自信がない」の53%が最も多かった。制度の導入には「賛成」34%、「反対」62%だった。同じ質問をした04年5月は「賛成50%―反対40%」で今回は賛否が逆転した。制度開始が目前となり、認知度が高まったことで、裁判員の責任への負担感と不安を強める国民意識が影響していると見られる。 (2009年5月3日03時06分  読売新聞)

「公平な裁判所」の保障違反

憲法三七条一項は被告人に「公平な裁判所」の裁判を保障しているが、裁判員の参加した裁判所はこの保障に違反する。憲法七六条三項は「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」と規定し、実際その通り実践されている。しかし裁判員はこれと異なる。裁判員法八条には「裁判員は、独立してその職権を行う」と書かれているが、これは法の建前であり、裁判員の中にはいろいろな人が混じるのは避けられず、実際には裁判上の適法な判断材料以外の情報により、あるいは時には他から精神的圧迫を受けて、判断を左右されるおそれのあることを免れない。また、裁判員は氏名も住所も公表されず、判決書に署名もしない。つまり言い放しの立場であり、その判断に責任を問われることもない。被告人の立場からみれば右から来て左へ去るその場限りの人たちによって自己の運命が決められることになってしまう。このような裁判員の参加した裁判所がどうして憲法の保障する「公平な裁判所」といい得るのだろうか。

「自由権、財産権の侵害」

憲法一三条は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定め、同一八条後段は「犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服せられない」と定め、同一九条は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と定め、さらに同二九条一項は「財産権は、これを侵してはならない」と定めている(このうち「良心の自由」については、政府は立案段階で指摘を受け、これに違反しないように政令で辞退事由を設けることを約束している)。ところが裁判員法によると、くじにより裁判員候補者とされた者は、具体的な事件ごとに行われるくじに当たって裁判所から呼出を受けたときは、自分の仕事や予定を放り出してでも、裁判員選任期日に出頭しなければならない。裁判員または補充裁判員(裁判員欠席の場合に代わって裁判員となる)に選任されると、これまた自分の仕事や予定を犠牲にして公判期日(一回で済むものは少なく、数回、時には数十回におよび、期間も数日から数カ月にもなるだろう)に出頭しなければならない。しかも公判の全審理に立ち会い(一日も一刻も欠席はできない)、審理が終われば、裁判員は評議の席で自分の意見を述べ、判決宣告期日にも出頭しなければならない(その他の義務は省略する)。もっとも裁判員法は若干の辞退事由を定めているが、事由はごく限定的で、しかも事由のあることを裁判官に認めてもらわなければならないから、電話で済まない場合は、半日か一日をつぶして裁判所に出かける必要がある。厄介なことなのだ。憲法に根拠もないのに突如裁判への参加は公共の福祉だとして、国民にその意思に反して以上のような被害(雇用主の財産的被害を含む)を及ぼす法律を作ることは、国民の自由権、幸福追求権は立法その他の国政の上で最大の尊重が必要だとする前記憲法一三条に違反し、また前記憲法一八条の苦役強制の禁止、同一九条の良心の自由の保障、同二九条の財産権の不可侵に違反することが明らかである。このような状況では、国民が裁判所から裁判員法に基づくもろもろの強制に服しなくても制裁を受ける理由はないといわなければならない(実際上も裁判所は「違反者」に過料を課すことはできないだろう)。

「裁判員の途中交替の違憲性」

裁判員法には、裁判員制度の運用を維持するために、裁判の原理と憲法の規定からすればとても許されない規定がさりげなく挿入されている。それは二回以上に及ぶ公判の途中で裁判員または補充裁判員が病気その他の理由で公判に出頭しなくなり、裁判員六人の定数が欠けた場合の対処規定である。もし、あなたが裁判員候補者だったとして、或る日裁判所に呼び出され、裁判長からつぎのような話を聞かされたら、どう思うだろうか。
 
「実はこの事件は、被告人は某夜某邸宅に侵入し、家人二人を殺害し、多額の金品を奪ったという強盗殺人事件である。被告人は全く無実だと主張し、多数の証人を尋問した。途中いろいろな事情で裁判員と補充裁判員の中に公判不出頭者が相次ぎ、補充裁判員も尽きた。先日の公判で審理を終え、直ちに評議をして結論を出す予定だったが、当日も事情があって公判が予定より遅れ、検察官の論告と死刑の求刑を終えたが、弁護人の弁論と被告人の最終陳述は次回公判に持ち越してしまったところ、その後裁判員の一人が急病で入院してしまい、出廷できる状態でないという。裁判員が五人になってしまったのでこのままでは裁判ができない。従来の審理に全く立ち会っていないあなたに、にわかに裁判員を引き受けてくれというのもおかしな話だが、裁判員法がそうなっているからお願いするのだ。従来の公判での争点と証拠をよく説明するから、何とか裁判員になっていただけないだろうか」
 
事柄をまともに考える人であればびっくりするだろう。被告人が無実だとして必死に争っている事件で、証拠調べに全く立ち会っていない者を裁判員に仕立て、「公平誠実に職務を行う」旨の宣誓をさせ、法廷で従来の公判での争点と証拠を説明するといっても、初めて裁判を経験するような素人には何のことだかさっぱりわからないであろう。加えて審理を終えるや、その人に「被告人は有罪か無罪か」、有罪の結論となった場合「極刑がやむを得ないかどうか」の意見を述べよ、つまり一票を投じよというのである。裁判員法六一条はこのようなことを行えと定めているのだ。裁判員の途中欠如の危険性は常にあり、何としても裁判員制度を維持するために、背に腹は代えられないからだ。外国では参審員や陪審員が途中で一人でも定数を欠けたときは、手続きを初めからやり直さなければならない。しかしわが国では憲法上根拠がない裁判員制度のために、手続きをやり直すことは迅速な裁判を受ける被告人の権利(憲法三七条一項)を侵害するから許されないと考えられる。また、裁判員法も採るところではない。
右設問の場合、後任の裁判員を引き受ける人がいたとしても、自己の職責を真面目に考えない人ではないか。恐ろしいことだ。要するに、証拠調べに全く、または一部にしか、立ち会っていない裁判員を裁判に関与させて被告人の運命を決めることを許すなど、憲法三一条の適正手続き(デュー・プロセス)の保障、同三七条一項の公平な裁判所の保障に違反するものである。従って、詳述は避けるが、卑見では、少なくとも主要な証人の取り調べ後に裁判員の欠如が生じたときは、もはや適法な裁判体を構成できないのだから、訴訟を打ち切る裁判がなされなければならず、被告人も釈放されることになると考えられる。俗な言葉でいえば、重大事件が途中でつぶれるのだ。なお裁判官は途中交替が許されるが、これは、裁判官は従来の証人尋問調書等全記録を精読して公判の経過と全証拠を理解し得るからであり、法の専門家ではない裁判員を同列に論じることはできない。つまり裁判員制度の無理がこの問題にも現れているのだ。その無理を通すために、正しい裁判を犠牲にしてはならないのである。

もし裁判員法の施行を強行すれば、特に長期の審理を要する事件では、裁判員を揃って選任できないことになる。それは被告人の迅速な裁判を受ける権利の侵害にほかならない。またかりに裁判員になる人がいたとしても、その人が日当目当てだったりする危険性は排除できず(このようになることは国民一般の最も忌むところだろう)、しかも審理の中途で裁判員の不出頭により定数が欠ければ、前述の通り憲法に従う限り審理を打ち切らざるを得なくなるのだ。すなわち裁判員法附則二条二項の定める施行の条件が満たされる見込みが立たないのであり、裁判員法はこの理由によって施行を断念し、廃止されるべきものである。

「裁判員法を施行してみてうまく行かなければ考え直したらよいのではないか」とか、「段階的に良くして行ったらよいのではないか」等の意見は、どう考えても誤りだ。裁判員法の対象は重大事件であり、その一件一件の裁判の帰趨に被告人の人権が、被害者を含む社会公共の利益と安全が、切実に関係している。重大事件の裁判が全体として円滑適正に行われ得る確実な見通しもないのに、試行錯誤的に、いわゆる見切り発車的に、裁判員法を施行することなど、国としてあまりにも無責任であり、同法附則二条二項に違反し、違法なことであり、間違っても許されることではない。

さだまさし氏は「信号も守れない人に裁かれたくない」とする文章(高山俊吉著『裁判員制度はいらない』中の特別寄稿)の名かで、「もうひとつ言いたいこと。たとえ凶悪犯人であっても、人としての尊厳は守られるべきです。素人判断を押しつけ、被告人を不安の淵に追い込んでもよいという理屈はないはずです」と言っている。これは千金の値のある言葉だ。本来なら司法の指導的立場にある人が言わなければならない言葉であろう。それが民間の識者の口から出ざるを得ないところに、この制度の問題性が端的に現れていよう。

●裁判員選出、5500人に1人 08年の対象事件2324件
 
最高裁は、2008年に起訴された殺人や強盗傷害など裁判員制度の対象事件数が2324件で、前年より321件減少したと発表した。選挙人名簿の登録者数をもとに1事件につき裁判員6人、補充裁判員2人として試算すると、選ばれる確率は全国平均で5593人に1人となる。都道府県別で選ばれる確率が最も高いのは高知県、最も低いのは山形県だった。

罪名別で最も多かった裁判員制度対象事件は強盗傷害の590件。次いで殺人が543件、現住建造物等放火が234件、強姦致死傷が189件だった。

●呼び出し状や質問票、6月にも裁判員候補者に送付 最高裁

最高裁は、5月21日から始まる裁判員制度に向け、裁判員候補者に送付する「裁判員等選任手続き期日のお知らせ(呼び出し状)」や辞退の希望などを尋ねる「質問票」のモデル案を公表した。早ければ6月にも、全国の候補者に順次送付される予定。各地裁はモデル案をもとに、地域特有の事情などを盛り込んだ独自の質問票を作成する。

裁判が3日程度で終わる多くの事件の場合、各地裁は呼び出し状と質問票を同封し、候補者に初公判の6週間前までに発送する。

呼び出し状には、裁判員を選ぶ選任手続きの日時や、その後の公判日程を記載。候補者は質問票に、裁判員になれない職業に就いているかどうかか、辞退希望の有無を書いた上で、10日以内に返送する。辞退を希望する場合は、仕事や家庭の都合など、具体的な事情を記載する。

詳しく知りたい方、断る理由を考えているあなた、裁判員制度に関する広報をよく観て・・・。
もし、自分のとこに通知が来たらと・・・選ばれる確率は全国平均で約5000人に1人。不安に陥って下さい。
http://www.saibanin.courts.go.jp/

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